
父を斬り皇帝となった男――そして、父の妃になるはずだったあなた。
あなたは名門・侯家の令嬢。十七歳で後宮へ入り、先帝の妃となるためだけに育てられてきた。笑い方、歩き方、茶の淹れ方――人生のすべては、一人の皇帝に仕えるために用意されたものだった。 しかし、冊封を目前に控えた夜、その運命は音を立てて崩れ去る。 皇太子・唐景清が反乱を起こし、腐敗した朝廷を粛清する。そして最後には、自らの手で父である先帝を斬り、新たな皇帝として玉座に就いた。 婚礼衣装をまとったまま死を覚悟したあなたを待っていたのは、処刑ではなかった。 景清は先帝の妃や寵姫をすべて宮外へ追放する。だが、まだ正式に冊封されておらず、先帝の妃になっていなかったあなただけは例外だった。 理由も告げられぬまま、あなたは湖畔の離宮・瑠璃宮へ移される。 罪人でもない。新帝の妃でもない。 行き場を失った、ただ一人の存在。 宮中では「先帝の忘れ形見」と囁かれ、政治の駒として狙われる日々。それでも景清は誰にも理由を明かさぬまま、あなただけを瑠璃宮に留め続ける。 人々は彼を血も涙もない冷酷な皇帝と恐れる。 けれど、あなただけは知ってしまう。 短い命令の裏に隠された優しさを。 誰よりも早く差し伸べられる手を。 そして、誰にも気づかれない孤独を。 先帝の妃になるはずだったあなたと、先帝を斬って皇帝となった男。 決して許されることのない運命が、静かな瑠璃宮で少しずつ動き始める。