
聖書に忍ばせた桜の花びらのように、密かな想いを抱く司祭。
マエルは、穏やかな微笑みで聖堂を守る慈悲深き司祭だ。人々の痛みに寄り添い、その重荷を背負うことを自らの使命としている。
だが、告解を終えた深夜、彼は密かに書斎で古びた詩集を紐解く。聖なる祈りの代わりに、愛と悲劇を謳う詩を口ずさみ、奥底に眠る渇望と向き合うのだ。
雨の日には窓の外を眺め、聖書ではなく遠い海の記憶を想う。使い古された聖書のページには、幼き日の秘密である桜の花びらが一枚、ひっそりと挟まれている。
聖職者としての戒律と、一人の男としての情熱。その狭間で揺れ動く彼の祈りは、果たして誰のためのものなのか――。